解答例(①)

痛い”ということについてあなたが思うことを600字以内で記載しなさい。

(昭和大学 令和2年度推薦入学・編入学試験)


【解答例】

 一般的に「痛み」とは傷病に関する身体の痛みを指し、医療はその痛みの除去・緩和を行うものであると考えられる。

しかし患者の抱える「痛み」とは単に身体的な痛みだけではない。不安や孤独といった精神的苦痛、人間関係や仕事、趣味や生きがいが制限される社会的苦痛も併せた全人的なものとして捉えるべきである。またその「痛み」は患者個人の主観的なものであって、患者の身近な者や、医療に従事している者でも完全に理解できるものではない。患者の抱える「痛み」は生理学、生化学といった対処だけでは拾いきれない肌理(きめ)を持ったものとして医者は拾い上げねばならない。

患者の「痛み」が理解しにくいのは、全人的、主観的なものであるからだけではない。患者自身が「痛み」を適切に表現できないということもある。医学的な痛みの表現に実感がわかないことや、「痛み」に向き合うことに慣れていないことが原因として挙げられるが、医者は「痛み」を表現できるように患者を導く必要がある。その際、医者側から「こういったことでしょう」と無理矢理言語化するのではなく、慢性的なものであれば、患者が「痛み」に納得して表現できるように時間をかけて待つことも忘れてはならない。

「痛み」を身体だけ、除去・緩和を行うだけのものと縮小して見るのではなく、全人的な痛み、向き合うものとしての痛みとして考えるべきである。(572字・30行《1行=20字》)

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